マリモで学ぶ生物学(3)『光合成とは?』


植物は、土から栄養を吸収するだけで成長しているわけではありません。

植物の身体を作る材料の多くは、空気中の二酸化炭素から作られています。そのために行われているのが光合成です。

マリモも植物(緑藻)ですので、陸上の植物と同じく光合成によって成長します。

マリモで学ぶ生物学(1)『マリモって植物?』

では、水の中で暮らすマリモは、どのように光合成をしているのでしょうか?

光合成とは

まず光合成とは、植物が光のエネルギーを利用して有機物(栄養源)を作る仕組みです。

光合成には、主に『光』『水』『二酸化炭素』の3つが必要です。

植物や藻類は、これらを利用して糖などの有機物を作り、その過程で酸素を放出します。

植物の光合成
植物の光合成

光合成の全体的な反応は、簡単に表すと次のようになります。

二酸化炭素 + 水 + 光エネルギー → 有機物 + 酸素

教科書では、糖をブドウ糖(グルコース)として次のように表すこともあります。

6CO₂ + 6H₂O → C₆H₁₂O₆ + 6O₂

実際の光合成は、一度の反応でブドウ糖が完成するような単純なものではありませんが、光合成全体の材料と生成物を理解するには便利な式です。

光合成によって作られた物質は、成長に使われたり、別の物質に作り替えられたり、生命活動のためのエネルギー源として利用されたりします。

植物は光を食べている?

「植物は光を食べている」と表現されることがあります。

しかし、光そのものが植物の身体になるわけではありません。

植物の身体を作る炭素の主な供給源は二酸化炭素です。光は、その二酸化炭素から有機物を作るためのエネルギー源となります。

料理に例えるなら、水と二酸化炭素が材料で、光は調理に使う火に近いものです。

そのため、光だけを当てても、水や二酸化炭素が不足していれば、十分に光合成を行うことはできません。

光を受け取る葉緑体

植物や緑藻の細胞には『葉緑体』という細胞小器官があります。

光合成は、この葉緑体の中で行われます。

葉緑体には、クロロフィルと呼ばれる緑色の色素が含まれています。クロロフィルを多く持つ植物や藻類は、私たちの目には緑色に見えます。

クロロフィルが光を吸収し、そのエネルギーを光合成に利用します。特に赤色や青色付近の光をよく吸収しますが、同じ色である緑色の光は吸収されにくく、反射されたり透過したりします。

マリモが緑色に見えるのも、細胞の中にクロロフィルを含む葉緑体があるためです。

光合成では何が起きている?

光合成は、大きく二つの段階に分けて考えることができます。

最初の段階では、クロロフィルなどが光を吸収します。そのエネルギーによって水が分解され、酸素が生じます。同時に、次の段階で利用するための化学エネルギーが一時的に蓄えられます。

次の段階では、そのエネルギーを利用して二酸化炭素を取り込み、糖のもとになる有機物を作ります。

つまり、光合成によって放出される酸素は、二酸化炭素から直接外れたものではなく、主に水が分解されることで生じたものです。

作った糖は何に使われる?

光合成で作られた糖などの有機物には、いくつかの使い道があります。

一つは、身体を作る材料にすることです。

植物では、糖を使ってセルロースなどを作り、細胞壁や新しい組織の材料にします。マリモも、光合成で作った有機物を使って、新しい細胞を作ったり、糸状の身体を伸ばしたりします。

もう一つは、生命活動に必要なエネルギーを取り出すことです。

植物や藻類も、動物と同じように「呼吸」を行います。呼吸によって有機物を分解することで、細胞が利用できるエネルギーを取り出します。

光合成と呼吸は同じものではありません。

光合成では、光エネルギーを利用して有機物を作ります。呼吸では、その有機物から生命活動に使うエネルギーを取り出します。

植物も呼吸している

植物は光合成だけを行っていると思われることがありますが、実は植物も昼夜を問わず呼吸しています。

光が当たっている間は、光合成と呼吸の両方が行われます。

日中は光合成によって作られる酸素の量が、呼吸によって消費される酸素の量より多いため、全体として外へ酸素が放出されます。

一方、暗い場所では光合成ができません。その間も呼吸は続くため、全体として酸素を消費し、二酸化炭素を放出します。

マリモも同じです。マリモを作る糸状体の細胞には葉緑体があり、他の植物と同じようにクロロフィルを使って光合成を行います。

昼間や照明が当たっている間は光合成を行いますが、夜間や暗い場所では光合成が止まり、呼吸だけが続きます。

マリモは光が長い間当たらないと、細胞内のデンプンを分解して生きるためのエネルギーを得ます。

水中の二酸化炭素を利用する

陸上植物は、主に葉にある気孔から空気中の二酸化炭素を取り込みます。

しかし、マリモには葉も気孔もありません。

マリモは、水に溶けている二酸化炭素などの無機炭素を、糸状体の表面から取り込みます。水も身体の周囲にあるため、陸上植物のように根から水を吸い上げる必要はありません。

ただし、水中では物質の移動が空気中より遅いため、マリモの表面付近で二酸化炭素が不足することがあります。

水流があればマリモの周りの水が入れ替わり、新しい二酸化炭素や栄養分が運ばれてきます。そのため、波や水流は、マリモを転がすだけでなく、光合成に必要な物質を届けるうえでも重要です。

水中では光が弱くなる

水面に光が当たっていても、そのすべてが水中まで届くわけではありません。

光の一部は水面で反射され、残りも水中を進むうちに吸収されたり、水中の粒子によって散乱したりします。そのため、深くなるほど利用できる光は少なくなります。

水が濁っている場合は、浅い場所でも光が届きにくくなります。

湖底のマリモにとって、水深や水の透明度は、光合成を左右する重要な条件です。

阿寒湖の巨大な球状マリモは、主に水深2~3mほどの場所で生育しています。そこでは、湖底まで届く光を使って光合成を行っています。

マリモの内側には光が届きにくい

小さなマリモであれば、光は比較的内部まで届きます。

しかし、マリモが大きくなると、表面に近い糸状体が光を吸収するため、内部へ進む光は次第に弱くなります。

そのため、大型の球状マリモでは、球全体が同じように光合成しているわけではありません。光合成が活発に行われるのは、主に光が届く表面付近です。

阿寒湖の大型マリモでは、光合成に利用できる表層の厚さは、およそ4~5cmと考えられています。直径が10cmを超えるような大きなマリモでは、内部に空洞が生じることもあります。

つまり、大きなマリモを切ったとき、内部まで表面と同じ健康なマリモとは限りません。

外側は光を受けて成長できますが、中心部には十分な光が届かず、古い糸状体が微生物によって分解されていきます。

丸い形と光合成の関係

球体には、光の当たり方が偏りやすいという問題があります。

動かない球体では、上を向いた面には光が当たりやすい一方、湖底側の面には光が当たりにくくなります。また、表面に泥や有機物が積もると、それが光を遮ってしまいます。

阿寒湖では、風によって起こる波がマリモを揺らしたり回転させたりします。

マリモが回転すると、さまざまな面が光を受けられます。また、表面に積もった細かな泥などが落とされ、水も入れ替わりやすくなります。

このように波による運動は、マリモを丸く整えるだけでなく、光合成を続けやすい状態に保つ働きもあると考えられています。

マリモから泡が出るのはなぜ?

光合成によって作られた酸素が水中へ放出され、その一部が気泡になることがあります。

通常、作られた酸素の多くは水に溶けて広がります。しかし、光合成が活発なときや、水に溶けきれないほど酸素が増えたときには、マリモの糸状体の間に気泡が見られることがあります。

ただし、マリモから泡が見えないからといって、光合成をしていないとは限りません。作られた酸素がそのまま水に溶ければ、目に見える泡にはならないためです。

光は強いほどよい?

光合成には光が必要ですが、光は強ければ強いほどよいわけではありません。

光が弱いと、十分な光合成ができません。光を強くしていくと、ある程度までは光合成の速度が上がります。

しかし、二酸化炭素など別の条件が不足すると、光をそれ以上強くしても、光合成の速度は上がらなくなります。

さらに、自然環境を大きく超える強い光は、葉緑体に負担を与えることがあります。照明によって水温が上昇すれば、低温の湖に適応したマリモにとって別の悪影響が生じる可能性もあります。

マリモの光合成には、光だけでなく、水温、二酸化炭素、栄養分、水流、水の透明度など、さまざまな条件が関係しているのです。

まとめ

光合成とは、植物が光のエネルギーを利用し、水と二酸化炭素から有機物(糖)を作る仕組みです。その過程で酸素も放出されます。

マリモも葉緑体とクロロフィルを持ち、水中で光合成を行っています。

ただし、陸上植物のように葉や根を使うのではありません。水に溶けている二酸化炭素を糸状体の表面から取り込み、水中に届いた光を利用します。

また、球状のマリモでは、すべての部分に同じ量の光が届くわけではありません。大きなマリモほど、光合成を行える場所は表面付近に限られます。

マリモの緑色の表面は、光を受け取り、自分の身体を作り続けている場所なのです。


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