大きな丸いマリモ(放射状マリモ)の断面には、木の幹のような年輪があることが知られています。
マリモは波や風の力で水中を転がり、マリモ同士の摩擦などで表面が磨かれて密度が高まりますが、冬は氷の下で動かないため表面が毛羽立って密度が低い状態となります。
季節で変わる表面の密度の差が年輪のような構造を生むと考えられています。
また、その年輪の層の中にはマリモの藻だけではなく、湖底の砂や小石・細菌などが集まってできているものがあります。
近年の研究で、このマリモ内部に住む細菌がマリモの構造強化や栄養供給に関わっていることが示唆されています。
目次
マリモに住む細菌の種類
直径20cm以上の大きな球状マリモは細菌の層を持っており、表層と内部付近では住んでいる細菌の種類も違っているとされます。
マリモ表面近くには、二酸化炭素や窒素などの栄養源を固定する働きを持つ藍藻類(シアノバクテリア)が生息しており、マリモへの窒素供給に関わると言われています。通常、夏は植物プランクトンや海藻が多くなるため湖の窒素が不足気味になるのですが、このシアノバクテリアのおかげでマリモは必要な窒素を得られているのではないかと推測されています。
一方、内部付近にも窒素の循環にかかわる亜硝酸酸化バクテリアがいます。
また、そこには硫黄化合物をエネルギー源とするバクテリアの生息が確認されています。火山性の湖で多い細菌です。
大きくなれるのは細菌のおかげ?
シアノバクテリアは粘着性の物質(ぬめり、バイオフィルム)を作り出します。マリモの藻の層の間に作られる砂や細菌を含んだ茶色い層は、このバイオフィルムによって砂や小石が取り込まれたことによってできていると考えられています。
シアノバクテリアが作り出したこのバイオフィルムは藻同士を強力に接着し、マリモが衝撃で壊れてしまうことを防いでいるようです。
大きくなったマリモは波の衝撃で壊れやすくなりますが、このバイオフィルムのおかげで巨大化しても球状を維持できていると考えられています。
マリモが壊れても細菌は失われない
一度大きくなり、細菌層を得たマリモが壊れてバラバラになっても、その破片は細菌を受け継いで再度マリモの元として成長するそうです。
参考
- 国立遺伝学研究所 仁木研究室・微生物機能研究室 マリモ巨大化の謎に迫る 阿寒湖のマリモを育む微生物たち
- ラジオ「FMくしろ」 7月19日(14:15〜14:45)放送
- 国の特別天然記念物 阿寒湖のマリモに“年輪のような構造”|NHK 北海道のニュース
ピンバック: 毬藻・藍藻・珪藻は同じ「藻」でも違う生き物 - マリモの広場