マリモにまつわる伝説

マリモが何故生まれたのかを物語る伝説はいくつかあります。

ペカンペ伝説

菱の実が草からマリモを作ったという内容の伝説です。小説「阿寒湖マリモ殺人事件」から引用します。

昔、阿寒湖には、たくさんのペカンペ(ヒシの実)があった。だけど阿寒湖のカムイ(神様)はこのペカンペが嫌いだった。美しい湖が汚れるといって、いつも邪魔者あつかいする。
怒ったペカンペは、大勢の仲間と、湖畔の草をむしり取って湖に投げ込んで、阿寒を去っていった。その草がマリモになったという。そのために今はヒシも生えていない。
廣済堂出版 阿寒湖マリモ殺人事件 [峰 隆一郎]

菱の実が神様に嫌がらせをするためにマリモを作ったという、マリモが悪者みたいでちょっと嫌な伝説です。

別の出典では、少し詳しい経緯が記載されていました。

トーコロカムイ(湖の神)は、ペカンペが湖一面にはりつめると、湖が汚れて見苦しくなり、アイヌがペカンペを取りにきて汚れるからと、ペカンペを快く思わず、絶えず虐待した。
ペカンペは、「仲間を増やしてアイヌの人たちの役に立ちたいから」と懇願したが、トーコロカムイに、にべもなく断られてしまった。それで、ペカンペは大いに怒って、そこら一帯の藻をかきむしり、それを丸めて湖の神向けて投げつけて、自分たちはさっさと塘路湖(トーコロ湖のところ)に引っ越してしまった。
その丸めた藻が、今日言うところのマリモ(鞠の形をした藻)となったのである。
(平成12年発行「久摺第八集」の中から、山本多助談として掲載されていたもの)
社団法人 北海道観光振興機構 ガイド教本・アイヌ民族編

これはアイヌ民族によって伝えられてきた伝説であると考えられています。

恋マリモ伝説

マリモの伝説と言えば、こちらを思い浮かべる方が多いと思います。

内容は以下のような悲劇的なものです。

阿寒湖の西岸にアイヌのモノッペという村があり、そこにセトナというピリカメノコがいた。セトナは酋長の娘だった。
セトナにはマニペという恋人がいた。マニペは逞しい男だった。ところが、セトナの婿には、副酋長の次男メニカが選ばれた。セトナは、乱暴者で悪がしこいメニカが好きになれない。
メニカはセトナを求めるが、セトナは言うことを聞いてくれない。メニカは、マニペがいるから、セトナが自分の思うままにならないのだと思い、マニペを殺そうと目論む。
しかし、メニカはマニペに挑んで逆に殺されてしまった。マニペはメニカを殺したことに苦しみ、阿寒湖に丸木舟を浮かべ、葦笛を吹きながら、湖に身を投げて死んだ。
マニペの死を知ったセトナは、悲しみのあまり、マニペのあとを追って、湖に身を投げた。その二人の魂が美しいマリモになった。
廣済堂出版 阿寒湖マリモ殺人事件 [峰 隆一郎]

ピリカメノコというのは「美しい女性」を意味するアイヌ語です。大和撫子のようなニュアンスでしょうか。

この恋マリモ伝説は比較的近年に創られた伝説であることが知られていますが、ペカンペ伝説よりもストーリー性があり、楽曲(毬藻の歌)演劇(バレエ)の題材となりました。

この伝説が有名になったのは、当時のラジオや新聞などのメディアがアイヌの伝説としてよく取り上げたからのようです。

参考

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