ニホンザリガニについて|マリモと同じ絶滅危惧種仲間?

マリモを食べる生き物としてウチダザリガニが知られていますが、他のザリガニはマリモを食べません。

むしろ元々日本に生息しているザリガニであるニホンザリガニは、マリモと同じようにウチダザリガニによって被害を受けているようです。

在来種のニホンザリガニは、マリモと同様に絶滅危惧種に指定されています。また、南限とされる秋田県大館市のニホンザリガニ生息地は天然記念物に指定されています。

ニホンザリガニについて

ニホンザリガニは日本の固有種で、国内に生息するザリガニの中で唯一の在来種です。英語では Japanese crayfish。学名は Cambaroides japonicus です。

全長5〜8㎝程度と外来種のザリガニに比べると小型です。体色は通常は茶褐色ですが、稀に青や白、黄色の個体も出現します。

ニホンザリガニと外来種のザリガニの違い
出典:ザリガニと身近な水辺を考える会

20℃以下の綺麗な淡水のある環境でなければ生存できないため、東北(主に北海道と青森県)にのみ生息しています。年中冷たい水の流れる小川や湖などにいます。ヒトの体温でも火傷することがあるそうです。

おとなしい性格で、基本的には生きている生物をエサにすることは無いようです。移動能力も低いことから生息域が広がりにくく、生活環境が悪化すると一気に激減するおそれがあります。

主食は落ち葉ですが、キレイなものではなく、ある程度微生物によって分解が進んだものを好むようです。

寿命は10年と長めですが、繁殖可能になるまで5年かかるとされます。また、一回の産卵数は50個程度で、繁殖力はウチダザリガニに比べてかなり弱いと言えます。

実際、ニホンザリガニの個体数はヒトの活動やウチダザリガニの影響などによって減少傾向にあるようです。

本種の生息地や個体数の急激な減少が始まったのは、わが国の開発、ウチダザリガニの分布域拡大等が急展開した過去20~30年間のことである。その結果、本種は、すでに述べたような僅かな生息地に、少数ずつ生き残っているのが現状である。しかも本種は繁殖力が弱く、生息環境の破壊やウチダザリガニの分布域拡大が止まるところを知らないわが国の水系で、個体群を維持することは極めて困難なことと考えられることから、本種は危急種と判断される。
ニホンザリガニについての参考資料

礼文島や利尻島では、ニホンザリガニを食用としていた歴史が確認されています。

ウチダザリガニによる影響

ニホンザリガニは、外来種のウチダザリガニやアメリカザリガニが持っている病原体であるアファノマイセス菌(ザリガニペスト)の感染によって死に至ると考えられています。

病原菌の一種ザリガニカビ病(ザリガニペスト;アファノマイシス菌)に、アメリカザリガニは耐性がありますが、在来のニホンザリガニにはありません。札幌市でニホンザリガニの大量死がありましたが、これはアメリカザリガニが保菌していたアファノマイシス菌に由来している可能性があることが分かっています。

北海道では、2014年10月に札幌市南区、2015年に9月札幌市内の石狩川でニホンザリガニの大量死亡が観察されました。死亡要因を分析したところ、死亡したニホンザリガニはザリガニペストに感染しているが分かりました。さらに病原菌の遺伝子解析が行われた結果、この病原菌はアメリカザリガニが保菌していたザリガニペストに由来している可能性が高いことが分かっています。
アメリカザリガニ対策の手引き 環境省自然環境局野生生物課 外来生物対策室 令和4(2022)年4月作成

ニホンザリガニは実は二種類?

ニホンザリガニは遺伝的に地域差があり、河川ごとに独自の遺伝子型を持っていることが報告されています。

ニホンザリガニの遺伝子多様性

これまで一種と考えられてニホンザリガニが、別種レベルで大きく2つのグループに分けられることが確認されています。

地理的には、日高山脈によって分けられる北海道東部と、北海道西部・東北地方北部で分かれるとされます。

ニホンザリガニは飼育できる?

個体数が減少して絶滅の危険のあるニホンザリガニですが、2023年より特定第二種国内希少野生物植物種に指定されており、販売目的で行うニホンザリガニの捕獲や譲り渡しが禁止となりました。

特定第二種国内希少野生動植物種は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(通称、種の保存法)に基づく国内希少野生動植物種の規制のうち、販売又は頒布等の目的での捕獲等、譲渡し等、陳列・広告が規制される制度です。
特定第二種国内希少野生動植物種の保全 | 自然環境・生物多様性 | 環境省

販売や頒布が目的ではない捕獲や譲渡しは認められているため、個人的に飼育する場合の捕獲は可能です。

2023年1月にニホンザリガニは「特定第2種国内希少野生動植物」に指定されました。この法令により、売買や販売目的の捕獲は罰金罰則を伴う禁止となる一方、研究や趣味での採集・譲渡は規制の対象外です。乱獲を防ぎつつ、子どもたちがニホンザリガニに興味を持ってふれあえる機会をなくさない道が選ばれたのです。
一般社団法人 北海道自然保護協会 NC Hokkaido 2023年4月 No.190

おしまい

マリモもニホンザリガニも、ヒトの活動やウチダザリガニによって危機にさらされている絶滅危惧種仲間と言えるかも知れません。

参考資料

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